健康保険組合は、健康保険法と関係法令・規則に基づき、本来は国が行うべき事業ですが、常時700人以上の従業員がいるか、同種・同業の事業所が集まって3,000人以上いる場合は、厚生労働大臣の認可を受け健康保険組合を設立することができるものとされています。前者は単一健保、後者を総合健保と呼んでいます。
健康保険組合連合会は全国1,387(令和4年4月1日現在)の健康保険組合で構成され、被保険者とその家族を合わせると、全国民のおよそ4分の1に当たる約3000万人が加入しています。
そして、保険料の徴収、給付などの健康保険事業を国に代わって運営することができる公法人であり、このような形を「組合管掌健康保険」と呼んでいます。また、健康保険組合を設立していない事業所は、全国健康保険協会(協会けんぽ)に適用され、協会けんぽが健康保険業務を行っています。
健康保険事業を運営するために保険料を徴収したり、保険給付を行ったりする運営主体のことを「保険者」といい、健康保険組合もこの保険者です。健康保険組合は、健康保険法で定められた保険給付(法定給付)のほかに、法定給付と併せて付加給付を設定することができます。また、健康の増進と維持管理のため、健康診査や体育奨励などの保健事業を自主的に展開し、運営することができるのです。
法律に基づき、企業(団体)構造に即した「保険料率」を自主的に設定することが可能です。
令和2年度の平均保険料率は、全国健康保険協会(協会けんぽ)が、約10%、総合健康保険組合が、約9.8%、単一健康保険組合が、約9.1%です。
健康保険制度は民間企業を対象とした被用者保険であり、健康保険法による強制加入の制度となっています。そして労使で収入に応じた保険料を負担し、本人や家族が、病気になったりケガをしたときの治療費や休業中の生活のために必要な手当をしたり、出産、死亡に関する給付を行い、生活の安定と福祉の向上を目的として生まれた、相互扶助の社会保障制度です。
サラリーマン等の被用者は、入社するとその日から健康保険をはじめとする各種社会保険の「被保険者」となり、「健康保険被保険者証(保険証)」が交付され、翌月の給料から保険料が毎月徴収されることになります。健康保険に限らず社会保険の場合は、一定の事業所で働く人はすべて本人の意志には関係なく、強制的に保険に加入することが法律で決まっています。これを皆保険と呼び、被用者個人が自分の好き勝手に社会保険に加入したり、脱退したりすることはできません。
被保険者の資格は、事業所に採用された日に取得し、退職又は死亡した日の翌日に失います。また75歳になると在職中であっても被保険者の資格を失い、後期高齢者医療制度の被保険者となります。
事業の柱は「保険給付」と「保健事業」です。
①「保険給付」では、病気やケガをしたときの医療費の支払い、レセプト分析、出産・死亡・休職などのときに手当金を支給します。
②「保健事業」では、健康診断、がん検診、データ分析、保健指導、メンタルヘルス対策、禁煙対策、運動推奨といった事業があります。
支出の43.1%が、高齢者医療制度の支援に使われる拠出金に充てられているため、残りで「保険給付」と「保健事業」を行っています。
高齢者医療費が増え続けていくと健保組合の拠出金も増え、健保組合が行うべき本来の二大事業に影響を及ぼしかねません。
高齢者医療制度の改革を進めると同時に、私たち一人ひとりが医療費を抑える工夫も必要です。
2022年で健康保険法制定から100年目となり、急速な高齢化と現役世代の減少は、日本の社会保障制度に大きな影響があります。赤字の健康保険組合が解散しはじめ、皆保険制度自体が危ぶまれています。
これからの100年も健康を支え、皆保険制度を守る健保組合が必要と言われ、下記の4点が決議されました。
①現役世代の負担軽減、全世代で支え合う制度への転換
②国民が身近で信頼できる「かかりつけ医」の推進
③オンライン資格確認など ICT 化の推進による医療の効率化・質の向上
④健康寿命の延伸に向けた保健事業の更なる推進
もしも、組合健保が財政的に苦しい状況等により解散する場合は、組合健保の被保険者は、全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)に移行することになります。